2019年8月30日ー2019年9月1日
「あいキャン」の裏から表、その先を見て
若者にアイデアと向き合う機会と底上げを
- 「今年度の若者会議をどんな形で実施しましょうか?何かいいアイデアありませんか?」
令和に入って最初の、ながおか・若者・しごと機構の若者提案プロジェクト部会で、こんな議題が上がった。
昨年度までの若者会議でも素敵なアイデアや、イベントやコミュニティなどが生まれてきた。
ただ、ここ最近マンネリ化している節があることは、理事、事務局共に課題としてあげていた。
- 「せっかくなら短期集中して、アイデア実現まで一気にサポートできる仕組みにチャレンジしたい」
今回あいキャンで食事と広報を担当した、大島理事が声をあげた。
昨年度の若者会議は月に1回、それを4か月のスパンで1クールとして実施していた。
なるべく多くの人に参加してほしいため、参加者が次の予定を設定しやすいよう、開催期間に余裕を設けていた。
ただ、期間が空くと心につけた火を消してしまいやすく、また熱も冷めやすくなってしまう。
結果、1回目→2回目→3回目と参加者も右肩下がりとなることが傾向として見えていた。
大島理事は、ボトルネックになっていた期間に目をつけて短期集中型の若者会議を提案した。
新しいチャレンジに部会内でも戸惑いや期待の感情が見え隠れしたが、
- 「令和初の若者会議、チャレンジしましょう!」
「今回は理事主体で開催してみよう!」
「事務局も精一杯フォローします!やってみましょう!」
などといった前向きな意見が多数出てきた。
今までの固定観念や先入観を捨てて、新しく長岡の若者がチャレンジする実験場、「あいキャン」が生まれた瞬間だった。
「あいキャン」は3日間かけて、アイデアピッチからチームビルディングを行い、チームでアイデア実現に向けたプランを立て、プレゼンまで実施する。
今までチャレンジした事のないイベントだったため、運営を行う上での課題がいくつか見えてきた。
- 何から決めて行くべきか?
- 事前に何を準備する必要があるか?
- 広報の手段
- 参加者への食事
などなど
「あいキャン」は3日間参加者に集中してもらう必要がある。
そのために、できる準備は全て事前にしておく必要があった。
別のアイデアピッチイベントで運営をしたり、戦略設計やブランディングなどを得意としている小黒理事に今回のプロジェクトリーダーとして、開催への道づくりをお願いすることになった。
各理事も可能な限り時間を調整しつつ、準備を行いましたが、リーダーである小黒理事と事務局メンバーに大きな負担をかけていたのも事実だった。
リーダーと事務局メンバーこそ裏の立役者だと僕は思う。
- 「美味しい食事が参加者のやる気をアップさせる!」
「素敵な空間だとアイデアが生まれるきっかけになる!」
準備をして行く上でこんな意見が上がったりもした。
参加者が食事の心配をしない様に、長岡の美味しいお店に交渉したり、チーム作業のしやすい広い空間の場所を探したりと、お祭り準備の様な期間もあっという間に過ぎ、ついに当日を迎える事になった。
アイデアピッチとチームビルディングのDay1
Day1ではアオーレ長岡を利用して参加者のアイデアピッチとチームビルディングを実施する。
受付開始時間を過ぎると、ポツポツと参加者が会場に足を運んできてくれた。
受付を終え、まだ人の少ないテーブルで軽食とドリンクを嗜む参加者たち。
友人同士で来ている人もいれば、個人での参加の人もいた。
- 「学生さん?このイベントどうやって知ったの?」
「実現したいアイデア考えてきた?」
「長岡の魅力って何書いた?俺ラーメン(照)」
今回メンターを担当する理事たちと、参加者の会話が聞こえてくる。
参加者もどんどん受付を済ませて会場が埋まり始めてきた。
ついに開始時間となりファシリテーターの声かけとともにあいキャンが始まる。
オープニングパーティーでは、「Catering割烹 わだの」さんのケータリングを堪能しつつ、参加者と運営メンバーも一緒に交流を行った。
- 「それさっき食べたけど美味しかったですよ!なんの魚だろう?(笑)」
なんて微笑ましい会話も溢れる。
学生参加者が多く、10歳以上も離れた若者の情熱に当てられ、自身の心も熱くなってくる。
また、この辺りで運営メンバーにも少し余裕が出てくる。
(参加者の人楽しんでくれるかなぁと心配していたメンバーも一安心)
パーティーで参加者も場の空気に慣れ始めたので、アイデアピッチに向けたアイスブレイクを実施した。
SDGsのカードと自分たちで記載した長岡の魅力付箋を活用して、ワクワクすることを考える。
- 「海を大事にするのと、この魅力を合わせるってどうすればいいんだ・・・」
「ベストマッチなカードが引けたよ!!」
など、各々のコップの裏に書いてあったNoの同じ人がグループとなり、限られた時間を使ってアイデアを練る。
その限られた時間の中には、発表の準備時間も含まれている。
参加者が一生懸命に考えているのを見つつ、斬新なアイデアにニヤニヤがとまらない。
アイスブレイクで肩慣らしした参加者がついに自分の温めていたアイデアを発表!
各々が発表用の紙とペンを取りに行く・・・
あれ?ほぼ全員が取りに行ってる?
まさか参加者の9割近くがアイデア発表の準備をし始めた。
嬉しい誤算、参加者の半数が発表できる時間しか確保していなかった。
ただ、運営メンバーも臨機応変に対応し、全員が発表できる様に立ち回った。
(発表者の対応をしていないメンバーが後ろの時間調整などを行っていた。)
最初からパーティー(「あいキャン」では、チームのことをパーティーと呼びます。)で発表する人たちや、カラーペンを使ってアイデアを印象づける人、タブレットを持参してアイデアを発表する人もいた。
全ての参加者の発表を終え、投票からパーティーづくりを実施する。
- 学生中心のパーティー
- 社会人と学生混合のパーティー
- 元からの仲間で作成したパーティー
など、それぞれ色々な可能性を秘めた5つのパーティーが結成された。
パーティーの代表者によるクジ引きで担当メンターを決め、Day2からの動きなどを説明する。
その後パーティー内で連絡が取れる様にして、Day1はこれで解散。
会場の片付けを運営メンバーで行っていると、会場の外で明日以降の相談をしているパーティーがちらほらと。
共通していたことは、みんな笑顔で相談をしていた。
Day2以降、どんな動きを見せてくれるのか大変楽しみだった。
運営メンバーはその後、Day1の振り返りと次の日の準備を行った。
- 「たくさんの参加者がアイデアを持ってきてくれていてすごく嬉しかった!」
こんな話をしながら運営もDay1を終える。
迷走と困惑と焦りのDay2
Day2はDay1から場所を変えて、長岡造形大学に会場を提供していただいた。
広い部屋に、大きなディスプレイ、パーティーごとで利用できる机や椅子、ホワイトボードなど、アイデアを練るための装備は揃っていた。
朝のオリエンテーションにて、Day2の流れを説明する。
Day1とは大きく変わり、自分たちで事業化できる様に煮詰める必要がある。
また、アドバイザー(長岡市の有識者)による中間審査があるため発表の準備も必要となる。
アイデアを練るところまではスムーズにできていたパーティーも、事業化へのプロセスやプレゼンのポイントなどを考え始めると迷走し始める。
- 「自分たちが何をやらないといけないかわからなくなってきた」
- 「どこへ向かっているのか考え直す」
など、手段と目的がごっちゃになり、限られた時間の中だからこその焦りが生まれたりする。
部屋の外に行ってリフレッシュしたり、ホワイトボードに書きながら整理したりと、それぞれ不安を払拭するため、パーティーごとに工夫をしていた。
Day2は始まってすぐに混沌とした空気が漂っていた。
メンターや運営も
- 「なんとかしてあげたい・手助けしてあげたい」
という思いを必死に抑えて、参加者の自主性を尊重した。
この時、アドバイスを口に出せないというのが、こんなにもどかしいものであることを知ったメンターもいたはずだ。
昼食は、別パーティーと交流しながらDining P’sさんのお弁当を美味しくいただいた。
午後になったが、いまだに中間プレゼンに向けて準備ができていないパーティーもあった。
メンターはスケジュール感を担当パーティーに伝えて、準備を促したりした。
- 発表資料を作るのに集中するパーティー
- 発表資料は諦めて、プレゼンの練習をするパーティー
- ギリギリまで作業をして、プレゼン準備の時間が取れなかったパーティー
波乱の中間プレゼンが始まる。
アドバイザーを前に各パーティーがプレゼンを実施する。
アドバイザーからは、厳しいがどう工夫したらいいかのヒントをもらえる。
プレゼンでうまく表現しきれなかったところなども、アドバイザーが拾って説明するチャンスを与えてくれる。
事業化に向けて足りないものや、プレゼンでの説明が必要なポイントなどをアドバイザーから得る参加者。
中間プレゼン後は、SUZU365さん(アドバイザーとしてご協力いただいた鈴木将さんがオーナー)の美味しいお弁当をアドバイザーと一緒にみんなでいただく。
アドバイザーにどんどん質問する参加者もいれば、うまくいかなくて落ち込む参加者もいる。
早くパーティーで作業をしたいとそわそわする参加者もいた。
中間プレゼンのためにすごく苦悩した参加者たちだが、それぞれが得るものはあった様に思えた。
(一時的にすごく落ち込んでいる参加者もいたが、Day3に挽回する!!と言ってくれていた。)
10年前の自分だったら・・・と考えるのは今の自分を否定することになるからなるべくしたくはないが、やはり最近の若者は優秀で、かつ熱量があると思った。
できるだけたくさんの参加者が満足した形で最終プレゼンを迎えられるように、Day3を頑張って欲しいと思いながらDay2は終わった。
運命の最終日Day3
日曜日の早朝、参加者が集まり始める。
アイデアピッチのDay1、実現に向けて事業内容を練り、中間プレゼンを実施したDay2。連日の作業による疲れが顔に現れている。
気丈に振る舞いながらも、焦りが見える参加者もいた。
Day3は冒険の書(アイデア提案書)を提出し、最終プレゼンの準備をしなくてはいけない。
15:30までに提案書を出さないといけない
この条件が参加者を焦らせる。
- 「内容がまだまとまっていない!」
- 「プレゼンの準備できてないよ・・・」
- 「やっべ・・・マジ時間がない!」
といった声が会場内に響く。
中には、
- 「この部分をメインにプレゼンをしよう」
- 「プレゼンの準備は任せた、提案書のまとめは任せて!」
といったようにパーティー内でロールを設定しつつ、最終プレゼンに向けて準備するパーティーもいた。
昼食は、Pizza&Caffe Alberoさんのサンドイッチ、パニーニとお惣菜!気分転換に会場の外に出て昼食を取るパーティーもいた。
午後になり、会場の外に出てプレゼンの練習をするという工夫を行うパーティーも出てきた。
メンターもやはり進捗が気になる。
しかし、メンターが動きすぎると参加者が不安になるため、椅子に座って我慢する。
メンターは、適度な距離感とタイミングを見ながら状況を確認していた。
提案書の受付開始時刻の15:00を迎える・・・
会場がざわついた。
なんと受付の前に我先にと提案書を持ってくるパーティーの代表者たち。
“提案書の提出に間に合わないパーティーがいたらどうしよう・・・”
といった運営の心配なんてただの杞憂に終わった。
参加者たちは自分たちで最終プレゼンへの切符をゲットしにきたのだった。
(提案書を80%の出来で一回提出した後に、一回だけ許されるお直しにて完成させるという作戦を考えたパーティーもいた。)
ついに運命の最終プレゼンの時間がきた。
審査員は・・・今までメンターをしていた理事4人(赤塚理事・大島理事・小黒理事・川上理事)。
理事たちは、普段から補助金申請の審査を行っているプロフェッショナル達だ。
今まで寄り添ってくれたメンターが審査員となり、戸惑う参加者もいたが、そんな中最終プレゼンが始まる。
各々のパーティーがこの三日間で生み出したアイデアや積み重ねた思いを審査員にぶつける。
審査員たちは、しっかり話を聞いた上で、質問をパーティーに投げる。
内容や足りていない部分などももちろんだが、
- 「実際に実現できるものなのか?」
「実現するための情熱はあるのか?」
といったところにも重きを置いた。
せっかく提案するなら何としても実現して欲しいし、本当にそのやる気があるパーティーなのか判断したかった。
3日間という短い時間の中、それぞれのパーティーが切磋琢磨しながら作り上げた最終プレゼン。
これは個人的な感情になるが、それぞれの想いが詰まっていて、聞いていると涙が溢れそうになるタイミングがあった。(冷静になれない私はメンターに向かないなぁと実感した)
そしてプレゼンが終わり、審査員が別室で審査をまとめる。
重い空気が会場を・・・とはならず、プレゼンが終わったことによる安堵感が会場に漂う。
- 「うまく話せなかった・・・」
「やっと終わった!だし切れたよね!?」
といった言葉が漏れる。
審査が終わり、審査結果が発表される。
最優秀賞:『長岡素材サイト CRiCo-クリコ-』(パーティー名:長岡市エンプティーズ)
オーディエンス賞※:『長岡素材サイト CRiCo-クリコ-』(パーティー名:長岡市エンプティーズ)
※オーディエンスと参加者同士の投票により決定する賞
なんと1つのパーティーがW受賞となった。
プレゼンでのインパクトもさながら、地域と人と物を巻き込む仕組みに共感した人たちが多かったのがオーディエンス賞も受賞した結果だと思う。
また、このパーティーが一番、自分たちのパーティー内のスキルセットを分析し、タスク割り当てを確実のこなして進めていた。
自分たちが受賞できなかったと悔しがるパーティー達・・・
その時、事務局の吉本から「ちょっと待ったぁぁ!」が入った。
最優秀賞に次いで高評価だった2つのパーティーに「理事特別賞」を急遽用意することになった。
これは理事が事務局に無理を承知でお願いして実現した賞になる。
当初予定されていなかった、表彰が2件追加となった。
日本酒を知って楽しむイベント「PONSHU-LAND」を発表した「にほんしゅであそぼ」、
学生と企業をつなぐサービス「長岡学生オンラインビジコン」を発表した「就活をぶっ壊す党」。
両チームとも、企画の内容もさながら、プレゼンでの見せ方などにも時間をかけて練習していた。その成果が今回の受賞につながったものものと思われる。
【「あいキャン」で提案された野望‐アイデア‐】
パーティー | 野望ーアイデアー | 内容 |
IoT街づくり | 乾かそっかー | 冬は積雪により靴が濡れてしまう長岡において、靴乾燥機ロッカーを駅周辺飲食店に設置することで長岡の市街地活性化に繋げる。 |
米百万俵塾 | 米百万俵 | 長岡駅周辺のカフェやレストランの空き時間を利用して食事とセットの英会話レッスンを開催し、長岡市民の英会話力を強化することで外国人旅行客の満足度を上げる。 |
JIZAKE TUNE | 地酒交流TUNE | 長岡の大学生がマスターになる日本酒の利き酒イベントを開催し、世代、国籍を超えた交流や情報交換できる場を提供する。 |
にほんしゅであそぼ | PONSHU-LAND | 若者を対象とした日本酒を楽しみながら学ぶことのできるイベントを開催することで、若者の日本酒に対するハードルの高いものというイメージを払拭する。 |
長岡市エンプティーズ | ながおか素材サイトCRiCo | フライヤー等に使用できる素材を学生やクリエイターがアップできるWEBサイトを作成し、地域の学生などの能力を活用したい企業と繋げる仕組みを作る。 |
就活をぶっ壊す党 | 長岡学生オンラインビジコン | 長岡の企業の課題をテーマにしたビジネスコンテストを学生対象にオンライン上で開催することで、企業と学生を繋げる。 |
アフターパーティー
表彰式も終わり、参加者の緊張していた顔も弛緩してきた。
- 「ようやく終わったなぁ・・・」
とか
- 「やりきったなぁ・・・」
なんて考えてるんだろうなぁと考えたら、3日間を少し思い出して感慨深くなってしまった。
アフターパーティーでは栃尾のエスポワールさんが、参加者に喜んでもらえるようにケータリング形式で提供してくれた。(まさかケータリングでかき氷があるとは思ってなかった。)
アフターパーティーでは、参加者もメンターも垣根を越えて美味しい料理を楽しみながら、話に花を咲かせた。
今まで立場的に結果を変えてしまうようなアドバイスなどはできなかったメンターや運営も、「もし自分だったら」というようなアドバイスを参加者に伝えたりしていた。
参加者の中からは「あーなんでそれ浮かばなかったのかぁ」なんて声も上がる。
「今度集まる時、一緒にアドバイスもらっていいですか?」なんて、メンターに協力を求める参加者もいた。
パーティーの最中も、参加者は自分たちでベースを作り上げてきたアイデアを、これから実現させるために、その方法を考えているように見えた。
若者たちが自分たちに必要なものを、経験しつつ、足りない部分を仲間で補いながら進んでいく姿をみて、この形が長岡市全体に伝播していったら、きっとみんながワクワクを追い求める地域になるのではないかと思えた。
3日間の参加者と共に過ごした理事たちも、若者たちの背中を押すためにはどういったサポートが必要なのか考えるきっかけになった。
若者の主体性や自主性を活かす場を提供できれば、こんなに熱い思いを生み出すことが可能になる。
ながおか・若者・しごと機構はもちろん、所属する理事も若者の底上げのために、今後も若者をサポートしていきます。
次の企画も楽しみにしていてください。
また、各々の理事がまとめた開催報告を以下に記載します。
色々な視点の開催報告を読んでもらえたら嬉しいです。
「あいキャン」ファシリテータ― ながおか・若者・しごと機構 理事 星野 智久